1. パルス着磁による超強力な超伝導バルク磁石の開発に関する研究


   RE-Ba-Cu-O系超伝導バルク磁石を実現する方法として、一般的には磁場中冷却着磁(Field Cooled Magnetizing: FCM)が用いられている。一方、FCMと並んで、超伝導転移温度Tc以下に冷却したバルクに1 s以下の強いパルス磁場を印加して磁束を捕捉させるパルス着磁(Pulse Field Magnetization: PFM)は、超伝導マグネットを用いず、着磁装置がコンパクトで経済的なため最近盛んに研究されている。PFMによる捕捉磁場BTPは、反復着磁法(IMRA法)や、バルクの温度を段階的に低下させながらPFMを行う方法(MMPSC法)などにより、液体窒素温度(77K)付近ではFCMによる捕捉磁場BTFCとほぼ同等の値が実現されている。しかし50 K以下の極低温でのPFMでは、バルク内で磁束がピン止め力Fpや粘性力Fvに逆らって急激に運動することにより発熱が生じ、その結果として試料の温度を上昇させ、臨界電流密度Jcと捕捉磁場の減少を引き起こすため、BTFCに比べて捕捉磁場BSUB>TPが小さい。これまで本研究グループでは、パルス磁場印加時のバルク表面の温度測定を系統的に行い、バルク超伝導体のパルス着磁のメカニズムを温度測定から明らかにしてきた(参考文献参照)。その結果から改良型MPSC (MMPSC)法を提案し、Gd-Ba-Cu-O系バルク超伝導体を用いて、これまでのPFMにおける捕捉磁場の最高値を上回るバルク表面で5.20 Tの磁場を捕捉することに成功した。

 これまでの研究結果から明らかになった点は以下の点である
(1)バルク表面に張り付けた複数の温度計による温度測定から、磁場の侵入位置を推定することができることを明らかにした。
(2)バルク超伝導体に捕捉される磁場BTはバルクの温度上昇dTmaxにより決定されることが明らかになった。
(3)バルクの熱伝導率k、熱拡散率aと、dTmaxから発熱損失Qを計算することができ、発熱の2つのメカニズム(ピン止め損失Qp、粘性損失Qv)の分離も可能になった。
(4)パルスの立ち上がり時間と捕捉磁場の関係を明らかにした。
(5)バルクの外周に金属リングを取り付けることで、温度上昇を低減し捕捉磁場が向上することを明らかにした。
(6)20Kまでの低温における温度上昇と捕捉磁場に関する知見を得た。
(7)これまでのパルス着磁における温度測定の結果から、新しいパルス着磁法(MMPSC法)を提案し、5.20 Tの磁場を捕捉することに成功した。
(8)複数個のバルクを列状、または面状に配置した新しいタイプのバルク磁石を開発した。
などです。



《具体的な研究内容》

・実験方法
・温度測定から何が分かるか?
・捕捉磁場向上への取り組み
・MMPSC法による5.20Tの実現
・新しいタイプのバルク磁石

詳しくは、研究業績を御覧下さい。

パルス着磁の実験装置


パルス着磁の概念図