藤代研究室をめざす学生へのメッセージ

藤代研究室では、超伝導材料熱電変換材料の研究を行いながら、エネルギー問題を考えています。

大学院に進学して研究を行いたい学生を歓迎します。




はじめに

   21世紀はエネルギー問題の世紀と言われています。エネルギー問題の解決の鍵は、いろいろな考え方がありますが、

1.現在のエネルギー資源を有効に活用する、省エネルギー、高効率化、原材料の節約という考え方
2.未活用の新しいエネルギー源を開発するという考え方

に集約できると思います。

 超伝導材料を用いると、材料の電気抵抗がゼロになる性質を用いて電力輸送、電力変換ロスの低減や、高い超伝導転移温度の材料開発によりもっと簡単に超伝導材料が多くの場所で利用できるようになります。超電導材料にはたくさんの種類がありますが、私達の研究室ではRe-Ba-Cu-O系やMgB2などを中心にその特性の向上と産業応用を目指した研究を重点的に行っています。特にバルク材料は永久磁石の10倍以上協力な疑似永久磁石を実現することが出来、モーター、風力発電機、医療、環境浄化などへの応用を目指して、国内外の研究機関や大学との共同研究を積極的に実施しています。大学院生を国際会議で発表させたり海外の大学(サスカチュワン大学、ケンブリッジ大学)へ研究インターンシップとして派遣し、国際感覚も身に付けています。

 また新しいエネルギー源の開発の方法としては現在、太陽電池や風力発電が注目されていますが、私たちは材料研究者の立場から、新しいエネルギー源として熱電発電に注目しています。熱電発電とは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式のことで、これに用いる材料を熱電変換材料といいます。身の回りには昼夜を問わず無限の廃熱が存在し、熱電変換材料を用いることでこれまで捨てていた熱エネルギーを電気に変換でき、しかもクリーン、CO2ゼロ、静寂などという多くの利点が存在します。しかし、現在のところ大規模な発電に利用できるような効率の良い熱電変換材料が存在しないのが現状です。
 一例として、自動車エンジンの排熱利用を考えてみましょう。よく御存じのように、自動車はガソリンを燃焼させその燃焼エネルギーを車の駆動力(機械的エネルギー)に変換するものですが、そのエネルギー変換効率は約25%です。つまり75%は熱エネルギーとして大半はマフラーから400〜600度の排熱として捨てられています。日本の自家用車の台数は約4000万台で、年間約7200万kLのガソリンを消費しています。仮に排熱の5%が電力として回収できるだけでも135万kL/年のガソリンが節約できることになり、これは大型タンカー6隻分のガソリンに相当します。作り出した電気エネルギーを駆動力として利用したり、さらに熱を取り除くことによりエンジン効率の向上など、高効率化や燃費の向上をもたらします。
 先ほども述べましたが、現在のところ効率の良い熱電変換材料が見つかっていないことも、研究者としてのチャレンジ精神を掻き立てます。皆さんも、このような夢のある材料研究をやってみませんか?




研究室の基本方針

 私たちの研究室の基本方針は「研究は楽しく!」「材料を自分で作製して、自分で測定する」ということです。材料開発の基本である「ものづくり」に親しみ、そのおもしろさ、重要性に目覚めてもらいたいというのが目的です。4年生で研究室に配属された学生は例外なしに酸化物試料の作製に挑戦することになります。その後、自分で作った試料の電気的、熱的性質を測定し、卒業論文、修士論文としてまとめるプロセスに続きます。  研究室でやった研究テーマを就職してからも続けて行うことは難しく、特に最近では就職難のため材料関係とは全く無縁の企業に就職する学生も出てきました。我々は材料開発に関する専門知識を学生に伝えたいことはもちろんですが、新しい未知の事象に突き当たったときにどのように対処するか、どのように論理的に物事を考えるかという方法論を研究室での生活から身に付けてほしいと常に考えています。  周囲からは厳しい研究室だとも言われておりますが、継続的な実験データの収集、基本原理の理解、教官とのきちんとした討論など、基本的な物の考え方や見方が最終的には将来必ず役に立つと確信しています。
 20代の若い時代に研究の手法や物事の考え方をきちんと訓練することは非常に大切です。従って、私たちの研究室では大学院に進学してじっくりと研究を行いたい学生諸君を歓迎します。


これまでの藤代研での研究の歴史

 超伝導体や熱電材料の研究おいて、材料中の熱の伝わりやすさを表す熱伝導率、熱拡散率、熱起電力などの測定を積極的に行っています。これらの物理量は、電気的性質や結晶学的性質とともに材料の最も基本的な性質として重要ですが、特に低温(4.2K〜300K)での測定は液体ヘリウムを長時間にわたり供給するため簡単には測定できませんでした。約8年前から液体ヘリウムを用いず、冷凍機を用いた熱伝導率、熱拡散率の完全自動測定装置の開発をスタートし、現在では手軽に高精度の熱物性測定が可能になりました。また最近ではやはり液体ヘリウムを用いない伝導冷却型超伝導マグネット(5テスラ=50000ガウス)と組み合わせ、磁場中での測定も可能になっています。材料中での熱の移動の研究は、単なる物理量の測定のみならず、超伝導転移や強磁性転移のメカニズムの解明に非常に有効であり、これまで多くの物質に対して研究業績を上げてきました。また応用面でも、超伝導体、金属、セラミックス、有機繊維と多くの国内外の企業や大学からの測定依頼や共同研究の申し込みがあり、極めて地味な分野ですが岩手大学の材料系の存在をアピールしています。


平成27年度卒業論文研究テーマ


(超伝導材料に関して)

1.パルス着磁による超強力バルク超伝導磁石の開発(世界最高記録6Tを目指して!)
2.バルク超伝導体の結晶成長
3.超伝導関連物質(Mn, Co酸化物)の電気的、熱的性質
(共同研究:新日鐵、ケンブリッジ大学、東京海洋大学)

(熱電変換材料に関して)

4.熱、電気エネルギー変換用半導体単結晶の作製
5.酸化物を用いた新しい熱電変換材料の探索
6.高効率熱電変換システムの開発
(共同研究:チェコ科学アカデミー、東北大学、NEDO、東芝)